ザ・スウガク

Photo by Akash Kataruka

こちらをご覧ください。

x=-b/2a
sin(90°-θ)=cosθ
△ABC   S=√s(s-a)(s-b)(s-c)

ザ・スウガク。

この歳で数学というのは、なかなかのブランクです。
街ですれ違っても気がつかないくらいのブランクです。
「あれ? 今すれ違ったの数学じゃね?」
「まじ? 気がつかなかった。」
くらいのブランクです。

数学はまた、普段の生活で興味を引くことがほとんどありません。かなり縁遠い存在です。
「あれ? ここにあった数学、いつのまにかつぶれたんだ。」
「まじ? 気がつかなかった。」
くらいの存在感です。

数学に対してのイメージは、公式にして[数学=わけがわからん]といったところ。
「ところでおれら話してるけど、知り合いでもなんでもなくねえ?」
「まじ? 気がつかなかった。」
くらいのわけわからなさです。

しかしここは気合です。マーティ・マクフライも言っています。
"If you put your mind to it, you can accomplish anything"
(心を傾けさえすれば、どんなことだって成し遂げられる)

というわけで意気込んで取りかかってはみたものの、やはりてこずりまくります。 高校の参考書で最も易しいものを使っていますが、それでも何度も前のページに戻って解説に当たらないと進めません。それでも足りない時は、中学の参考書を当たったりもします。それでも足りない時は、小学生に八つ当たったりすることにします。

ジャイアンの虫の居所の悪いバージョンかオマエは。 くらいの理不尽さで当たりちらします。 ジャムシバージョンってやつです。

そして数学というのは、その"理不尽"の思い切り対極をなす"理にかなっていることこの上なし"なところが持ち味だったりするわけです。

それはさておき、時々、受験くらいでしか役に立たないことを今さら一所懸命やってどうすんだ、とか思うこともあるのですが、先日ふと、昔見かけたある比喩を思い出しました。

「数学というのはMathematicsの訳語ですが、語源的には数学という意味はなく、数量や図形に限定されることもなく、知ること、ものの考え方とでもいうほどの意味だったそうです。……(略)…… 本当の数学は、発見の喜びをいたるところにちりばめながら、歴史はじまって以来、いまも創りつづけられつつある思考の大建築です。ある部分は大改造を行い、あるところはいきづまり、あるところは目下建築中といったぐあいです。 その建造物のレンガを1つだけのせるために、一生をかける数学者もいます。 もしそうだとしたら、この建造物が美しくなかろうはずはありません。……」 (はじめてであうすうがくの絵本 安野光雅著 福音館書店)

そんな捉え方をしてみると、僕は単純に「おみそれしました」という気分になります。数学に対してもっていた、わけがわからない、退屈、役に立たないというイメージから一転、とても魅力のあるものに見えてきます。えらいギャップです。 まるで、全盛期のマイコー(Michael Jackson)を知らない若い人が、初めて彼のパフォーマンスに触れた時に「この人ただの変態じゃなかったんだ……」と感じるかの如くのギャップです。ゥクッ……。

スウガク! ヒーフー!

アォ!

さて。

その"美しい建造物"をみる力をつけることは、はたしてできるでしょうか。