ヴォーチェ・ディ・フィンテ

Illustration by borlanag

いいとこ取り

声(発声)に興味のある方、ということは歌や演劇に興味のある方へ、実に貴重かつマニアックな情報をお届します。「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」という声についてです。

ヴォーチェ・ディ・フィンテとは、大雑把にいうと、ファルセットから派生した、胸声とファルセットの間にある声、といったところ。いろいろな名称でよばれていて、ほかには「メッツォ・ファルソ」「ヴォーチェ・ディ・ゴラ(喉からの声)」「ヴォア・ミクストゥ(混合された声)」「ファリンジル・ヴォイス(咽頭声)」「ミックス・ヴォイス」などがある。最後の二つについては、多分、同じだと思うけれど、厳密には分からない。

さて、このヴォーチェ・ディ・フィンテ、なにがすごいのか。十分に発達したヴォーチェ・ディ・フィンテを胸声、ファルセットと融合させると、それぞれが結びつく上に、一層パワーアップする、という現象がおこる。

「…ファルセットの叙情的な音質に、胸声の“パンチ”を持たせることによってできあがったこの組み合わせこそ、歌手が、音域と強弱を、端から端まで極めて自由に移動できるようにさせるものなのです。」(ベルカント唱法 コーネリウス・L・リード)

すごい!

胸声とファルセットのいいとこ取り!

音域が拡がり、声量が増して、なおかつ、その高低、強弱の変化も自由自在!

問題はただ一つ。どうやってこの声を発達させるか、が難しいということ。 さらにその前に、この声を見つけること自体が第一関門なのだ。

まずは見つけ方

そこでまず、この声の見つけ方(出し方)をいろんな方面から集めてみた。

●コーネリウス・L・リード氏 「ベルカント唱法」より
「…異なった母音を種々用いてファルセットを歌ってみるとよい。…イタリア音の開いたアを明瞭に発音することが、実際上不可能であることを発見するに違いない。しかし、ヴォーチェ・ディ・フィンテだと、あらゆる妨害を排して、この歌声アを運ぶ媒介物となるであろう。…これがこのふたつの音の性質の違いを即座に看破する決め手である」

●E・ハーバート・チェザリー氏 「ザ・ヴォイス・オブ・ザ・マインド」より
「ある音をファルセットでアタックしたあと、途切れることなく持続させつつ…その状態から下方へほんの少しだけ、よけいに“圧力をかけ”さえすれば、ファリンジルのメカニズムを働きださせることができます」

●当間氏 「合唱講座」より
「1:ファルセットで弱く声を出す。 2:クレッシェンドしていく。 3:声を出し始めた時、響きは鼻に抜けていない状態ですが、クレッシェンドをしながら響きを鼻に通していきます。そして同時に、鼻の奥の方から響き(息)が通り始めたころから喉頭を少し下げます(喉を広げる)。この時、ファルセットの声が違った風に変化すれば成功です。しかしそれが「胸声」になってはいけません。「胸声」になる手前の声がよいのです」

理論と実践

…という感じだ。書き忘れていたけど、ヴォーチェ・ディ・フィンテを発達させるためにはその前提として、胸声とファルセットをそれぞれ十分に発達させてからでないといけない。 それにしても難しい。この程度の引用では千分の一すらわからないので、是非、書籍とサイトを通読しましょう。ヴォーチェ・ディ・フィンテがわからなくても、その探求の過程が声を育てること請け合いです。いやほんとに。 理論に精通して、地道に練習を重ねて、そしていつの日か、このヴォーチェ・ディ・フィンテを体得してください。

そしてだれかそれを僕に教えてください。