アジアン・アジール1:香港

プロローグ

アジール(アサイラム)というのは避難所・聖域のような意味で、かつての教会、市場、荘園などがそういう性格をもっていたという。わりと複雑な概念なので正確にはわからないけど興味をひかれるし、そういう場所が今でもあればいいのにと思う。なにしろ世の中というのは、一見平穏に見えても何が起こるかわからない。反社会的勢力が台頭するかもしれないし、隣人がこぞってカルトに入らないとも限らないし、水虫が襲ってくるかもしれない。

事情はどうあれ、日本で行き詰まったり、いったん社会と距離を置いて状況を変えたいような時は、思い切って場所を変えてみる、海外に行くという選択肢がある。中でもアジアというのは、日本から近く物価も安く、ある程度気軽に行ける地域だ。
最近では日本との物価の差はなくなってきたものの、その代わりにネットもLCC(格安航空会社)の路線も張り巡らされて、ちょっとした仕事をしながらみたいな旅も可能になっている。

そこで、現地はどんな感じなのか、旅先としてどうか、住むことになったらどうか等を見てみたいと思った。ちょっと調べた感じでは、

●フリーランス的な仕事をしながらの滞在(ノマド)に向きそうな国
カンボジア、タイ、マレーシア、フィリピン、インド

●現地採用的な仕事が豊富そうな国
ベトナム、タイ、香港、シンガポール、中国

という感じだったので、そのうちのいくつかを回ってみた。
アジアのアジールを探す旅だ。

香港で結婚?!作戦

たまたま近い時期に読んだ本の著者松本哉氏が「世界で最も好きな都市のひとつ」という香港。いわれてみるとたしかに、おい!なんだなんだ、このごちゃまぜ感なんか面白そうだぞコノヤロー!こうなったらもう行くしかない!(←こういう文体が楽しい人)

物価が日本とほとんど同じなので収入なしではかなり居づらいのだが、そうはいっても安宿のドミトリーは1,200円前後からあるので数日程度ならコワくない。

ある程度知ってはいたが、行ってみると香港は大都会だ。そのせいなのか香港人(中国人)だからか、ここの人は無愛想なことが多い。ゲストハウスでもレストランでも客・外国人として特別扱いされることは少なく(どころかぶっきらぼうで)最初はちょっと驚いたが、そういうものだと思っていたし別に悪い感じはしなかった。

しかし香港人といっても様々である。尖沙咀にあるJCBプラザ(日本語資料があったり荷物預かりのサービスが利用できる)に行ってみた時のこと。ここの受付の女の子がめちゃくちゃ愛想よかった。アイドルの握手会とかいったらこんな感じなのかな、というくらいの笑顔と心遣い。なんかとにかく一所懸命聞いてくれる。日本語で。

香港でこんなに愛想がいいなんてありえない。待てよひょっとすると個人的に気に入られているのではないか。よし、ここはもう結婚して移住するしかない!(松本構文)

こうして、早くもアジールが見つかった。いやーしかし香港に住むっていうのはどんな感じなのかな。住む環境は狭くていまいちかもしれない。でも仕事は国際的な感じ?のが多くて面白いんじゃないか。食事が脂っこいのが気にかかるけど、そこは自炊とかしてなんとかしのぐとしよう。プランは着々と進む。

翌日、プラザを再度訪れる。荷物を預かってもらうかもということは伝えてあったのだ。しかしくだんの彼女、
「こんにちは。何かお手伝いできることはありますか?」(はじめまして、みたいな感じで)
…顔すら覚えられてなかったんかい!やい、どういうことだ!(松本構文セルフツッコミ)

そんなこんなでアジール探しの旅は続く。