主人公を少年にすることで描けるもの:Mud(映画)の感想

最強の少年?!

主人公を少年にすることでこそ描けるものがあるんだなと思った。

14歳のエリスは最近にしては珍しくえらくしっかりしていて、逆に新鮮というか。こういうジュブナイルの主人公ってけっこうドジだったり引っ込み思案だったりコンプレックス抱えてたりすることが多いけど、エリスはそういうのはまったくなくて、大人からアドバイスされてもつまらなかったらはっきりそう言って部屋を出るわ、年上の男(高校生)をぶん殴って女の子を助けてあげるわ、好きな子にさらりと「彼女にならない?」とか言うわ、人殺しでも自分がいい人だと思ったら手助けするわで。そうかといっていわゆるDQNみたいなのでもない。ほんとに中坊か?

そんなエリスはまっすぐに、「愛」というものは確かにあって、愛することはいいことだ、と強く信じている。一歩間違うとイタい人になりかねないけど、彼のキャラと年齢がそれをすごくまっとうなことに感じさせる。

ふりかえってみると、そんなふうにまっすぐに信じていたことが自分にもあったんじゃないだろうか。やっぱりいろんなことがあって、世の中そんなに単純じゃないって少しずつわかってきたんじゃなかったろうか。でもそのプロセスはちょっと忘れていて、それを思い出させてくれるような。そして結局、なにか愛が見つかるというわけではないにしても、それについて新しく知ることができたような。

それぞれの通過儀礼

ミシシッピ川の島で暮らしている変なおじさん・マッド。下手すると怪しい物乞いなのに、どこか人を惹きつけるところがあるミステリアスな男。

「この世界には獰猛な力が働いている。善と悪、幸運と不運…。人間としては、できるところでうまく利用しなくちゃな」

エリスの相棒ネックボーンの叔父ゲイレンは、川底からいろんなガラクタに混じった掘り出し物を見つけてくる。

「この川はたくさんのゴミを運んでくる。どれが取っておくのにふさわしいものか、どれを放っておくべきかを見極めなきゃならない」

エリスがさしかかっている場所をすでに通ってきた「先輩」たちは、それぞれの紆余曲折をふりかえってその感想を漏らすみたいに、物語のところどころでそれを語る。

前半は特に、アーカンソーの川や自然や登場人物たちのしぐさがどれも「絵になって」いて、後半はエンターテイメント映画ばりにさりげなく伏線の解決やアクションがあって。 そんなこんながうまく調和していて、いい映画観たなーという余韻を残してくれる。